医療現場&マスコミの現場から
お笑い徒然草

同じ笑いの輪の中で 生活習慣病は消えてゆく

 
2024年03月
01 02
03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
 
 
医学ジャーナリスト/松井宏夫
1951年生まれ。医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
『ドクターズ・アイ 医者がすすめる専門医』(BS-I)にレギュラー出演、『最終警告本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『太田英明ナマ朝!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演と、テレビ、ラジオ、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、日本医学ジャーナリスト協会幹事を務めている。主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2』 (主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド―最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は34冊を超える。

ご意見・ご要望をお寄せください

 
ユーモアクラブトップに戻る
<<前へ 1 次へ>>

2007年01月15日(月曜日)更新

第5号 痔を治すのも自然治癒力

「病気は人間が持っている自分で治ろうとする力、いわゆる“自然治癒力”が治し、医師はそれを手助けするにすぎない・・・」
 長い医療の道を歩み、ある域に達したお医者さんの多くは、この言葉を口にする。これは痔の治療においても同じだという。
 痔の治療でよく知られる平田肛門科医院の平田雅彦院長は「痔は生活習慣病」が持論。私は、その院長の著書を、痔の取材、そして原稿を書くとき、必ず机上に置いている。
 その本の中で、平田院長も「笑いの良さ」を取りあげている。
 痔を改善するにも自然治癒力が大きく関わり、その自然治癒力をあげるものとして、「よく寝る」「よい香りをかぐ」「ヒーリング」「腹から笑う」「座禅や瞑想をする」を挙げている。
「よく笑うと脳がリラックスし、低下していた間脳の働きが回復するために免疫力が高まる、というメカニズムが解明されました」
 と、平田院長は解説している。
 もちろん、これに加えるのが生活習慣の改善。それには、「規則正しい生活」「食生活」「運動」「ストレス」――。
 規則正しい生活をするには、朝早く起きてゆっくり朝食を摂る。すると朝のお通じも自然と訪れる。忙しいと、朝食も摂らず、便意も無視してしまって便秘になり、痔への道。生活を見直す必要がある。
 食事は食物繊維を多く摂り、ビフィズス菌などの善玉菌を腸内に増やすようにする。
 運動は1日30分のウォーキングを2回は行う。そして、ストレス解消のために好きな趣味を楽しむ。もちろん、腹から笑うようにしていると、ストレスは自然と発散してしまう。
 痔で苦しんでいる人は、生活習慣を改善すると共に、笑いを生活の中に――これが重要なようである。
 

2006年12月26日(火曜日)更新

第4号 病気体験者の対談を読んで

 私は男性なので、基本的に女性誌を読むことはあまりない。ところが、最近、婦人公論の12/22・1/7合併号を手にし、対談を読んだ。それは、元NHKアナウンサーの山川静夫さんと、エッセイストの岸本葉子さんの「“にもかかわらず”笑うことの大切さ」。
 山川さんは脳梗塞・心不全・大腸腫瘍を体験。それも、わずか半年の間に。一方、岸本さんは虫垂がん。その2人が病気の体験、そして、今の気持を忌憚なく語っている。
 その中で、タイトルとなった言葉を口にしたのが岸本さん。
「ユーモアとは、“にもかかわらず笑うことだ”って何かに書いてありましたけど、確かに“にもかかわらず”というのは大事だなと思います」
 この言葉を受けて、山川さんは、「ものすごく深刻な病状の人がいますから、一概には言えないかもしれないけど、笑いとは、健康を維持する、ソフトな良薬ですよね。楽しいことを考えるのは、とても大切です」と、口にしている。
 科学的ではなく、まったくの体験からの言葉。だが、病を克服した体験者の知り得た “妙薬”なのだろう。
 妙薬の笑いを自然に生み出すためには、不要なものはどんどん捨て去るに限るようです。
「病気をすると、もう義理はいいという感じになります(笑)。いい意味でわがままになれますし。私は、今やっと病気から丸5年がたって、少し自分を緩める方向に持っていかなければならないな、と感じています」
 岸本さんのいうように、義理が多くては笑いはでにくいもので、義理が重いと病気にもなるし、病気からの回復も難しいだろう。
人間、わがままを言える人々に囲まれて生きるのが、長生きに結びつくし、自然に免疫力を上げる笑いに結びつくような気がする。
対談は、私にそう思わせてくれた。病気を体験した人の話というのは、きっと病気の人には大きな励ましになるのだろうとも、強く感じさせられた。
 

2006年11月27日(月曜日)更新

第3号 鳴呼、桂林

 中国の桂林は香港や広州から西北に飛行機で約50分飛んだところにある。人口約150万人で金木犀の街。そして、銀杏、羅漢果もよく知られている。
 丁度、金木犀の花が終わりに近づく11月。羅漢果から抽出した高純度エキスの取材で桂林へ行った。桂林は花や果実のほか、最も有名なのが水墨画に描かれている山を眺めながらの“利江下り”である。
 2年前に初めて桂林を訪ねたときは、台風が成田を直撃。飛行機が飛ばず、桂林入りが1日遅れたため、利江下りはカットされ、仕事だけで戻ることになってしまった。
 それがあって、今回は仕事を2日間で終了し、3日目は利江下りとなっていた。そのため、2日間は羅漢果高純度エキスの工場、栽培農家、農業試験場、そして、日本の企業とその高純度エキスを協同開発した広西師範大学を徹底取材。
 高純度エキスとは、羅漢果から砂糖の甘みの300〜400倍のモグロシドのみを抽出したもの。他の甘み成分であるブドウ糖などは一切入っていない。そして、モグロシドは体に吸収されないので、まったくのノンカロリー。糖尿病の人々には、砂糖の代わりに使って、砂糖分だまっていてもダイエットできると人気なのである。今日では、日本以上にアメリカで大いに人気となっている。
 その取材を済ませた夜、広西師範大学の教授陣も含め、18人がひとつの大円卓で食事会となった。中国側の主賓が43度の老酒で17人と乾杯、乾杯・・・・・・と始まった。
 そして、4人目で、私が中国人の人々8人とそれぞれ乾杯をせざるを得ないことに。結局、最終的には小さなグラスで18杯は飲まされてしまっていた。
 翌日、覚悟していたように、二日酔いの状態。気持が悪く、とても利江下りなど考えられない。私だけがホテルにとどまった。
 昼頃には水分も摂れるようになり、多少元気になってきた。そして、ベッドで寝返りを打つと、腰にギクッとする痛みが走った。ギックリ腰である。動けない程ではなかったので、すぐに冷蔵庫から冷えた缶ビールを3缶ほど出して、それを自分の腰におき、俯せ状態で患部を冷やした。なぜ二重苦を味わわねばならないのか――。
 そして、夕方、利江下り一行が戻ってくる頃なので、風呂に入り、綺麗にした。そして、髭もそり始めた。すると、携帯用電気カミソリが途中でストップ。洗面所にあった安全カミソリでそると、口の周囲は血だらけ状態と、二重苦どころか三重苦――。
 戻った一行から利江下りの素晴しさを聞かされ、その中の一人が、「松井さん、来年も来れば、きっと三度目の正直になりますよ。大丈夫ですよ」と、ニコニコ顔で元気づけてくれた。
 が、すぐに私の口から出た言葉は――。
「二度あることは、三度ある、という言葉もありますよ」
 全員が、ワッと笑った。私ももうフッきれて、一緒に笑っていた。
 

2006年10月27日(金曜日)更新

第2号 涙の後に笑いあり

私の人生の先輩であるA医師の奥さまが他界され、その「お別れ会&食事会」に出席した。交際範囲の広い人とあって、300人くらいの人が集まった。
博識でいつもにこやかなA医師が、白一色の大きな祭壇の下で参列者を迎えながら涙を流されていた。初めて見るA医師の泣き顔。どんな言葉をかけるべきか思いつかず一礼して席についた。
そのとき、笑いではなく“涙の効用”を思い出した。東京女子医大病院の出村博副院長が行った『涙とストレス解消』について1998年9月に取材した。出村副院長グループは10〜60代の人々の協力を得て、涙とACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)の血中濃度の変化を調査。負荷前。次に暗算などで計算をしてもらうと数値が上昇。その後、玉ねぎをむいてもらって涙を流し、さらに、悲しい映画を見て涙を流してもらう・・・・・・と。
「感情が入った涙を流した後は、ACTHもコルチゾールの数値も減少しています。それは、ストレスが減少したからです」と、出村副院長の言った言葉を思い出した。
つまり、ストレス・ホルモンが減少したのだからストレスが和らいだと考えられる。映画を観て泣いたときが、最もストレスが和らいでいた。映画はより感情が入り、より泣ける方がストレス解消効果はアップする。
A医師は、何人かの代表が語る「奥さまの思い出」に、涙、涙の連続。それでスッキリしたのか、最後、会場の出口で見送ってくれるA医師は、「私の原稿の相談にものってよ!」と、すっかり笑顔で送ってくれた。涙の後には、やっぱり“笑い”がいい・・・・。
 

2006年10月01日(日曜日)更新

第1号  生活習慣病の理解も笑いが導入に

1人ひとりの生活習慣が原因で、病となって自分に返ってくる『生活習慣病』。ここへきてメタボリック・シンドロームが俄然注目を集めている。厚労省は、メタボリック・シンドロームを予防することを、これからの中心にすえたのは、これで生活習慣病をしっかり予防し、医療費の削減に結びつけられると考えているからである。
地域の保健士が中心となって、メタボリック・シンドロームの理解、生活習慣の改善に人々を啓発しようとしている。が、なかなか耳を貸す人は増えてこない。
自分自身が行ってきた生活習慣病が悪いといっても、それを改善するのは、そう容易いものではない。
そんな中、住民の耳をくすぐっている保健士たちも出てきた。話のきっかけがメタボリック・シンドロームではなく、“笑い”なのである。
笑いが健康に効果を発揮する話を住民を集めて行うのである。“笑いの効用”についての講演ばかりか、漫才を聞いたり、落語を聞いたり・・・・・・“同じ釜の飯”ではなく、“同じ笑いの輪の中”で一時を過ごすと、何故か打ちとけてしまう。一緒に笑った仲間だからか、生活習慣病予防の話も聞いてやろうか・・・・・・という気持になってくれるという。
それは、きっと笑いが人の心に“余裕”をもたらすからかもしれない。
とまれ、笑いが導入となって、地域住民の間に生活習慣病予防の動きが浸透してくると、脳卒中、心筋梗塞といった血管病が減少してくるかもしれない。そうなると、まさに厚労省の思惑通りなのだが、はたしてそうは問屋がおろすのだろうか――。
 
ユーモアクラブトップに戻る
 


ページTOPへ