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鈴木富夫
昭和14年新潟県村上市生まれ。
昭和37年(株)講談社入社。「週刊ヤングレデイ」「週刊現代」編集長のあと学芸図書出版部長。この時、超ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」「気くばりのすすめ」など刊行。広報室長、第一編集局長などを経て取締役。
平成16年退任後、出版倫理協議会議長、東京都青少年健全育成審議会委員など。平成26年12月退任。
平成16年3月、偽造キャッシュカード事件の被害発覚(3,200万円は当時、日本一)。同年5月、妻晟子に6年介護の末、逝かれる。8月、東京地裁に銀行2行を相手に、訴訟を起す。平成17年3月、銀行2行が全面補償で和解成立。
18年5月、郷里村上市の隣、(旧)朝日村上中島で、本を読む塾「けやきぶんこ」を設立。 毎月10日ほど出かけている。

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2006年12月06日(水曜日)更新

第5号 初雪が来た!     初心者の暮らし方

 12月4日、越後に初雪のニュース。TV画面の新潟市内の風景は、冬コートに傘だ。いつもの冬の光景、例年より9日遅い、という。弟のヨシヒコ(村上市在)にTel。「降ってるよ、根雪?どうかね。雨になったら、すぐ消えるよ。兄貴来るころは、わからないけど」実は、私、冬の朝日村(けやきぶんこ)に行く、気持ちワクワクしているのだ。
 先月(11月)、11日居て、欅をはじめ、落葉は、ほとんど終わった。毎日の庭掃除、塾長の日課は、ひとつ消えた。雪国の冬の暮らし、いろいろ教えてもらっている。何しろ私の帰郷、40余年ぶり。遊びで2〜3日居るのと、暮らしは違う。私が18歳まで知っていた雪国と、いまはまるで変わった。まず、都会以上の車社会。田舎はひとり1台だ。まず、冬タイヤ、冬ワイパーに交換した。ワイパーまで変えるなんて、知らなかった。四駆のパジェロミニ、これでOK。次に灯油ファンヒーターを2台購入。灯油18リットル入り、4個も。灯油を注入するのも、凄い進化してた。昔では夢みたい。ガソリンスタンドのセルフと同じだよ。手を汚さないで済む。道場は、これとエアコンの併用だね。ここまでは、11月中にスミ。
 弟ヨシヒコに、初雪を聞いて新たな注文。スノーダンプ1台とスコップ2本(プラスチックの軽いのと鉄製の氷った雪をガンと割るヤツ)。「私が行く前に買っておいて」と。「手袋も要るよ」「軍手がたくさんあるよ」「あれじゃダメ、すぐビショビショになる」冬の外作業用があるらしい。現地のホームセンターで、私、下見している。「どうなるか、ともかくワンセット、そろえておいてよ、必ず要るのだから」
 雪国の暮らし、都会からスキーに出かけ、昼はゲレンデ、夜は温泉と酒、そんな訳にいかないのは、よくわかっている。何しろ毎日雲低くたれ、雨、雪、ときに吹雪く。晴れの日が、ほとんどない。だから冬こそ、本が読める。12月は遠藤周作著「深い河ディープ・リバー」(講談社文庫)。自分の人生を考え直す好著である。
 

2006年11月27日(月曜日)更新

第4号 冬景色「センセイの鞄」の中身

 11月末の朝日村「けやきぶんこ」の付近は、すっかり冬景色、欅の大木もみな、裸になった。紅葉の鮮やかな赤もくすんで、落葉している。「朝から雪囲いでね」塾生の皆んな、口をそろえていう。これから長い冬になる。私が来てからも、冷雨、曇り、風の日々で、いつ雪が降りだしてもおかしくない。
 私なりの準備もした。石油フアンヒーターを2個、道場の掘炬燵には、ホットカーペット、1畳敷を2枚、灯油購入、車に冬タイヤ、冬ワイパー装着。あとはいくつか植えた庭木の雪囲いだね。家、道場を雪から守る、これで何とかなりそう。
 実は私、それらをやりながら、気がついた。雪国生まれの私、東京では、「雪国越後」について、様々勝手をいってきた。知ってるつもりでいた。準備をしながら、塾を手伝ってもらっているチヨミさん、家を継いだ弟ヨシヒコの説明、さっぱりわからない。私の知識は、40年も昔の話。スコップひとつにしても違う。新しい道具それぞれについて、彼らの説明、使い方の“講習”が必要だった。1回聞いても、すぐ忘れる私。電話で聞き直す。「説明書、読んでよ」電話口の向こうで、彼らアキレている。私の確実な老化の実感、記憶、手先、体力ともに思い通りにはいかない。私は、いまや、私は雪国に生まれただけで、都会から来て、「雪国の生活を初めてやる男」に、なってしまっている。謙虚に学ばねば、を再確認する日々。
 今回は「センセイの鞄」(川上弘美著=文春文庫)である。元高校教師のセンセイと30歳年齢の離れた教え子ツキコさんの恋愛物語。再会したとき、ツキコさん37歳、センセイは私とほぼ同じ年齢、ウフフフフである。小説は、ほぼツキコさんの目線で進む。30代後半の女性が、妻に逃げられた゛老人"に惚れるだろうか。女性の誰しもが、父親以外の大人の男に接するのは、「学校の先生」が初めて。塾生の皆んな、それぞれ体験があるだけに、意見は賑やか。窓の外は冷雨だが、中では熱い。
 

2006年11月02日(木曜日)更新

第3号 熊の出没騒動の渦中で

「先生、此処(上中島地区=「「けやきぶんこ」のある)にも、熊が出ましたよ!」本を読む塾を手伝ってもらっているチヨミさんが、今回、私が朝日村入りすると、顔を見るなり、いった。彼女、何か嬉しそう。「ひとりで散歩なんか駄目ですよ!」「でもキミの家の方が、ずっと奥(山々に近い)じゃないか」
 今年は、熊(月の輪熊です)の村里への出没が非常に多いという。村里で熊は、主に柿、栗を狙う、鶏舎もやられた、とか。目撃情報は70回を超え、“駆除”した熊は、30頭にのぼる(10月下旬)。村里への熊出没、TVニュースで、よく目にするが、現地にいると、生々しい。熊が可哀そうなことが、山で起こっているのだろう。
 熊に関する話、さまざま聞いた。熊鍋のつくり方、集落で違うらしい。味噌に漬けて焼くもいい、とか、肉の部位によっては、ナマも美味しいだとか。万一熊に出会ったら、「ヤツら前足2本で襲ってくるから、どう身をかわすか」身ぶり、手ぶりでやって見せる。外を歩く時は、腰に鈴をつけ、口に笛をくわえよ、と教えてくれる。
「けやきぶんこ」周りは、道路に面した側を含めて、夜は真っ暗闇。灯り一つも、私の部屋からは見えない。こんな暗さ深さ、初めてだし、私、それが大好き。物音ひとつしない静寂、それがいい。幸い側に柿や栗の木もないが、何か、ゴソっと音がすると、寝酒の焼酎を飲む手を休めたりする。闇の不気味さ、怖さだね。
 間もなく冬が来る。熊と村里、とても「邂逅の森」(熊谷達也著)や宮沢賢治「なめとこ山の熊」のようなロマンはないよ。いっそいま、皆んなと読んでいる池波正太郎さんの人気シリーズ「剣客商売」の秋山小兵衛、大治郎父子のような人が、いたら、どうしたろう。東北のあちこちで起こっている“熊の駆除”みたいなこと、しないだろう。「もう里には来るなよ」と熊に教えて。
 

2006年10月17日(火曜日)更新

第2号 欅の落葉が舞う中で

 山は紅葉、黄葉に染まり、晴れた朝の遠望は、鮮やかの一語。山粧ふ季節である。わが「けやきぶんこ」塾長の仕事は、自慢の欅の大木、8本の落葉を、毎日掃くことが、日課となった。竹箒2本購入、ひとりでやっていると、早く着いた塾生の誰かが、手伝ってくれる。私よりはるかに上手。素直に嬉しい。
 青葉若葉の季節に開塾して、間もなく半年になる。スタートの「蝉しぐれ」の主人公、牧文四郎の家が250〜300坪、当時の下級武士の家とほぼ同じなのだが、都会のマンション暮らし40年の私には、広すぎる。これ、雪が降ったら、どうなるのだろう。その時になって考えるさ、と、ひとにはいっている。
「蝉しぐれ」(藤沢周平著・文春文庫)「国家の品格」(藤原正彦著・新潮新書)から始めて、「鉄道員」(浅田次郎著・集英社文庫)、「誰のために愛するか」「生贄の島」(曽野綾子著・文春文庫)ときて、「博士が愛した数式」(小川洋子著・新潮文庫)を、9月に読んでもらった。文庫本の選び方は、塾長の独断、「読んでよかった!」本に尽きる。ともかく1年やってから、方向がでるかも知れない。「博士が愛した数式」では、主人公の家政婦さんのように、“オイラーの公式”を知るために、図書館にこもった塾生や、著者小川さんが、巻末に挙げている参考文献の数式に関する本、「私、全部持ってました」と持参してくれた塾生もいた。塾長は、感心するのみ。“本読み”は、いるのである。
 さて、10月末には、池波正太郎さんの「剣客商売」「辻斬り」(新潮文庫)の2冊。池波さんの超人気シリーズである。“60男の夢”を描いたこの作品。どんな反応が出るか、楽しみにしている。“池波節”は冴えわたっているし、何より池波さんの実年齢からの想いが、こもっているようで面白い。「全部読もう」と思う塾生が何人出るか。
 毎月10日余、新潟・朝日村に通いだして、日がたつのが、早い。さて今回も真面目に!
 

2006年10月01日(日曜日)更新

第1号 田舎で「本を読む塾」なんて

 わが「けやきぶんこ」は、朝日村上中島集落の静かな林の中に在る。敷地300坪に、欅の大木が7〜8本あったので、名付けた。道の正面には、村上豊画伯の「けやきぶんこ」の額装の文字、私、大好き。
 第1回、藤沢周平著「蝉しぐれ」(文春文庫)から始めた。塾生は現在54〜55人。
 5クラスある。いちばん若いのが28歳だから大人ばかり。月1回、1クラス10〜12人。本代含めて1500円。「蝉しぐれ」を読む課題は3つ。(1)風景描写など気に入ったところ2〜3行、そのまま写す。(2)初めての言葉、漢字、そのまま。(3)主人公、文四郎、おふくの会話、からみをそのまま。いわゆる感想文は不要。私にそのつもりは、まったくなかった。本は、いろんな読み方がある、それをいちばん知ってほしいから。皆んな初対面、私には不安が、いっぱいあった。私は1回2時間、ひとりで講義するるつもりは、まったくない。参加したひとりひとりに様々、話してほしい、大丈夫だろうか。藤沢さんの「蝉しぐれ」の舞台は、山形県鶴岡市、朝日村は県境で接している。田圃風景など、そっくり、入りやすいと思った。話を聞いて驚く。「藤沢周平は大好き。エッセイまで全部読んでる」人から「60ページしか読めなかった」人までいる。どうなる?
 私の心配は杞憂だった。皆んな明るく、率直に意見をいった。話を聞いていて、自分に引き寄せて読んでいるのが、よくわかる。そして、明るく賑やか会話。それぞれの日常生活が、にじみ出ている。女性が6割強いるのもいいみたい。中休み10分を、はさんで盛り上がる。皆んな車で来る。午後2時の部と夜6時半から部があるが、どのクラスも女性の元気がいい。これまでに、5冊、こらからは、「博士の愛した数式」(小川洋子著=新潮文庫)、さてどうなるか?私も、毎回読み直してはノートを、とっている。数式部分も十分納得して読んでみると、いや、作家はエライッを再認識。
 
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