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2014年11月14日(金曜日)更新
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第101号
落葉積もる中、「大江戸釣客伝」の“もの狂い”たち
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越後の短い秋、刈田道を行く、寂しい風景、もうすぐ冬だな、である。上中島の「けやきぶんこ」に入る。もう一面の落葉が始まっている。これから毎日、落葉が積もる。とても私ひとりじゃ、太刀打ち出来ないよ。今月は夢枕獏著「大江戸釣客伝」上・下(講談社文庫)である。江戸は元禄の釣客伝(釣キチ)だね。釣りキチの面々と、時の将軍綱吉の、有名な生類憐みの令との闘い。この“法律”何回も改定され、どんどん行きすぎてゆく。ついには釣キチにも厳しい手が及ぶ。遠島処分など。このころの“時代劇”の有名人が総登場する。水戸黄門、吉良上野介、松尾芭蕉、紀伊国屋文左衛門、そして大旗本・津軽采女の生涯が中心。この采女の義父が上野介、将軍綱吉の側小姓でもあったから大変です。この“采女”をたて糸に、江戸の釣キチ(釣りはもの狂い)の世界をたっぷりと描く。私は、少し心配した。「けやきぶんこ」は、女性が多い、大丈夫かな、と。始めてわかった。此処は“在郷”だ。昔は女の子(小5くらいまで)も、三面川で、釣りやかじか捕りを、男の子といっしょにやっていた、と。どの組も大盛り上がり、出てくるのは有名人、彼らと釣りに関わる話だもの、楽しいに決まっていたよ。采女のことばにある。「自分の握るこの竿は、人が生きてゆくための杖である。人は淋しい。人は愚かだ。その淋しさや、哀しさや、愚かさの深さに応じて人は釣りにゆくのであろう」 もの狂いの殿様のことば、いかが、かな。
一度みかねた千代美さんが、早く来て、庭と、ウッドデッキの上の落葉を綺麗にしてくれた。「おかげでサッパリしたね」 そんな時東京から電話あり。 「富夫さんに決まりましたよ、野間賞に」「ホントか」公益社団法人「読書推進協議会」の本年度に、私の授賞が決まった、という。野間読書推進賞という。10年になったら、と私、思っていたが、誰れか推す人がいたのだろう。感謝。さっそく皆んなに伝えたら、20人近く、表彰式(出版クラブ会館)に来る、ことになった。二次会、銀座のどこでやればいいかな。当日(11月7日)心配な私。
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2014年10月11日(土曜日)更新
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第100号
リスペット・サランデルにハマり、魅せられて
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村上に着き「けやきぶんこ」に向かう田圃道の県道、「オッ、稲刈りが始まるな」だったのが、あっという間に稲刈りが終わる。豊かな稲穂も寂しくなる。長い冬が来る。先月に続いてスティーグ・ラーソンの「ミレニアム1 ドラゴンタトウの女」下巻を読んだ。上下巻とも部厚い。スウェーデンの小説。登場人物の名前も覚えにくい。その上、近視相姦あり連続殺人ありのおぞましい内容。ウチの人たち大丈夫かな、だったが、皆んな立派な“本読み”になっていた。「面白くってスラスラ読めた」が大半。この日誌も100号、区切りの本にはよかったみたい。「日本にも昔、横溝正史さんという作家が、よく地方の名家の事件を書いた。金田一功助探偵の推理とおぞましさだね。その不気味さを存分に大きくしたみたいな作品だね。私は、そう各組の結びでいってきた。パソコンに触れない私には不思議だが、リスペット・サランデルという若い女性、やはり圧倒的人気。コンピューターの世界に詳しく、ハッカーまでやってのける。そんな人脈を世界にもっている。試しに訊いてみた。「パソコンやって、タトウの女みたいな才能と関心がある人、身近にいる?」皆んな「とてもとても」らしい。
海外翻訳もので皆んな此処までのめり込んでくれたのは初めてだろう。いまのスウェーデンの世相と日本人の暮らし、どうだろうか。結婚についての考え方、若い男女の接し方、いまの日本、スウェーデンに近いかもしれない。少し前まで、若い女性が私に、「私の男、3、4人かな」なぞ、平気でいうのを聞く。私にすれば、エエーッなのだが、知らん顔で「以外と真面目だな」と答えたりしている。ホントは私のモラル(倫理感)と大部違っていて、もうとめようがないのかな、が実感である。ツマラないな、お前たちともいいたいが、現実は変わって来ている。
さてこのブログも100号、よく続けてこれたと思う。11月には社団法人・日本読書推進協議会から、「けらきぶんこ」と私は、表彰されることになった。いつまでやれるか、わからない、だから面白い。村上に通いますよ。
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2014年09月16日(火曜日)更新
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第99号
6000万部売れた「ミレニアム」1を読んで見よ
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今回の課題図書、私に少し不安があった。スウェーデンの翻訳小説である。皆んなが必ずいうのは「登場人物の名前がねぇ」である。「覚えきれない」となる。「でもな、世界で有数な福祉国家、しかも、この本は世界中で6000万部も売れているのだよ。想像つく? 『窓際のトットちゃん』でも700万部だよ」。私自身、ちょっと、と思ったのは、部数6000万部である。どんなハチャメチャなんだ、と。しばらくためらっていた。先月(7月)かっての私の本のブレーンのK子さんからTEL。「スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』に、はまった。6冊全部読んじゃった」という。K子さんを夢中にさせたのか、ホントか。“かってのブレーン”と書いたのは、K子さん、母上の介護で、東京⇔高松を行ったり来たりの生活。もう数年になる。「私、本を読めなくなって」といってから、私、声をかけてない。早川書房の文庫を見たら、6300万部と帯にある。奥付は33刷である。日本で増えたのか、やってみることにした。
「ミレニアム1―ドラゴン・タトゥーの女」上・下2冊、厚いから2ヶ月かけてやる。主人公のカップルの名前、ミカエル・ブルムクヴィストとエリカ・ベルジェ、2人は雑誌社の共同経営者で愛人同士。発行している雑誌が「ミレニアム」という。ミカエルは離婚1回、娘ひとり。エリカは夫と子どもふたり。エリカの夫は、妻とミカエルの仲を公認している。なんともはや、なのである。2人を窮地に追い込む事件、これも凄いのだ。
私の心配をよそに、ウチの塾生たち、皆んな読んできていた。苦情は前述の通りだが、面白い、という。「下巻が早く読みたいので、買っちやった」という人が2人もいたね。私はよくわかったよ。これは昔の横溝正史さんの「犬神家の人々」「獄門島」などと同じだね。島全体が密室、そして様々なセックス、近親相姦までありのテンコ盛りだもの。リスベット・サランデルという超有能なデータ女性。彼女がドラゴン・タトゥーの女なのです。夏休みの終わりに丁度よい本。とても昔のマルティン・ベックシリーズとは違うけど、読ませる。
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2014年08月08日(金曜日)更新
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第98号
山本兼一著「利休にたずねよ」大傑作小説を読む
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いつものように、村上駅で特急「いなほ」を降りる。とたんに、「ウッ暑い」と声に出していた。なんだこれ。東京より暑いよ、越後もときどき、こんな夏がある。ジムニーを預けている姉の家から、車で15分か。上中島の「けやきぶんこ」に着く。欅8本他、樹々が青葉をつけている。「やはり村上の町内より涼しいな」、塾の中に入るとさらに感じる。結局エアコンを使ったのは、終わりの3日だけだった。蝉の声もうるさいほどじゃない。
今回の山本兼一著「利休にたずねよ」(PHP文芸文庫刊)、この本、塾生皆んな評判いいだろうな、やる前からわかっていた。けやきぶんこでも、この1年ほど、No.1の小説かもしれない。とくに此処は女性が多い。彼女ら、お茶(茶道)を習っている。“茶道言葉”は苦にしないだろう。焦点は、歴史のナゾ、利休の庇護者、絶対の信頼の秀吉が、なぜ切腹を命じたのか、だ。小説を読んでもわからない。読者の皆さん想像してください、だもの。私なぞ、やっぱり女か、安心はするが、それもちょっと、な、である。いまもって、裏千家の隆盛を聞くにつけ、茶道の強さ、いまにつながる。淡交社では利休のこと、どうなっているのだろうか、と思ってしまう。誰か教えてよ。
もうひとつ。秀吉“黄金の茶室”は有名だが、提案したのは、この小説では利休となっている。これも淡交社さんに訊きたいね。全体の構成がから細部まで、若くして死んだ山本兼一さんはこの一冊で残るな。と思えるほどの出来。作家というのは、それでいいのだろうな。この人の「命もいらず名もいらず」なんてのは、ひどいもの。編集者がわるいのである。たぶん理由はいろいろあっあろうけど。
そんな訳で、この酷暑の中、5組どの組も時間をオーバーした。皆んな活発に話したからである。ほとんど私は、茶かしたり、合いの手を入れるだけでよかった。不思議なもので、素材(今月の本)がいいと、私は進行役をつとめるだけでよい。でも利休が高麗の女、をずうっと想っていたなんて、私には想像出来ない、男と女の関わりなんて、そんなものかい、なんて余計なことはいわなかった。
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2014年07月15日(火曜日)更新
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第97号
「河北新報のいちばん長い日」読んで村上大祭に
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今回、私は村上に“長逗留(6月21日から7月9日まで)”した。理由はふたつある。ひとつは、けやきぶんこも9年目に入ったこと、そして、この連載でわかるように、私の“村上通い”が100回となる。何かがあれば、皆んな楽しくニギヤカにやる、これ私が大好き。私が村上入りする前に、“組長会議”をやりいろいろイベント決めていた。もうひとつは、7月7日の村上大祭に、最後だと思う(すぐ75歳になる)から、久保多町(母方の実)の祭法被を着て、徹夜でくりだそう、というまったく個人的な衝動。やってみたい、と。何しろ私の5,6歳の頃、祖父と私、2人の阿部写真館のツーショット(記念写真)がある。あれをやりたい。70年ぶりの法被だよ。
前半は、区切りのけやきぶんこ、熱っぽくやった。本は「河北新報のいちばん長い日」(河北新報社著・文春文庫)である。3年前の大地震に遭遇した東北、仙台の新聞「河北新報」のドラマ、さすがに新聞記者が書いた文章、読みやすく、わかりやすい。「私、何度も泣きました」「徹夜して読んだ」と皆んながいうように、“河北さん”の頑張りが、読む人の胸を打つ。しかも3・11が起きて、翌日の号外と朝刊を越後の新潟日報社の絶大な協力で出せたというのだから、此処の人たち、入りやすい。ひとつ覚えた。河北人って何んだ、と思っていたら、「白河以北一山百文」なんて言葉があるんだと。昔の差別だねぇ。1987年の創刊、今日まで休みなく続いている。私は課題のひとつに、「あのとき何をしていたか、いって下さい」と入れたが、村上は、ほとんど何もなし。千葉・松戸の私の家の方が、被害は、いっぱいあったよ、村上はホント安全安泰だね、自給自足出来るし、“安泰ぼけだよ、あなたたち”が、私の結び言葉。ホント、村上には何もない(戦争から災害まで)が、この本、読むとあらためて認識させられる。
6月中に本をやって、さて私ごと。村上大祭に寝ないで参加する。姉フミ子に法被、帯もしめてもらい、「雪駄も足袋もあるよ」「いや、俺は運動靴がいい」といい、町内のキヨッサ(板垣喜代志君、同級生)と6日の夜中から動く。羽黒神社へ。昼から何軒で飲んだか。
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