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2017年06月16日(金曜日)更新
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第450号 〜年相応のゴルフは“ジャストミート”だ〜
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5月6月とゴルフ行きも次第に増えて、体の動き(回転)もいくらかよくなってきた。70代末頃までは冬場プレーからしばらく遠ざかっていても、春先いきなりコースに出てクラブを振り回してボールはそこそこ飛ばせたが、やはりこの年になるとそう簡単にはいかない。4月末のゴルフ部コンペでは、谷越えのティショットを意識するあまりミスってしまったし、最近はいい当たりだと思っても、ボールが以前とくらべると10〜20ヤード後ろなんてことがよくある。
これは、もちろん加齢による筋力の低下が第一要因だが、冬場の長い休みから回復するのに5〜6年前よりずっと時間がかかるようになったせいだ。
運動感覚や筋力はトレーニングを1日サボッタだけなら1日で取り戻せるが、2日サボレば2×2で4日、3日サボルと3×3で9日、つまりサボッタ日数を2乗するほど頑張らなければ取り戻せないという奇妙なトレーニング神話(?)がある。その伝でいくと、日頃まったく練習しない私のゴルフ感覚や筋力の回復力など年々衰えていってアタリマエ、それでエージシュートが目標だなんて笑わせるんじゃないよと、面と向かっていわれないだけマシだ。
おまけに私がお気に入りのOゴルフ場は、このあたりではタフで難しいと評判のコースだ。なにしろ現在の私の飛距離ではほとんどのホールで、グリーンを狙うクラブがウッドになる。それに私はラウンドではレギュラーティを使う。体型やファッションが若作りなのにシルバーティから打つのもヘンナモンだし……というか、ま一種のこだわり、かっこつけである。
とはいえ目標達成には私なりに成算はある。
ゴルフは静止しているボールを打つゲームだ。飛んでくる(動いている)ボールを打つ野球やテニスと違って、反射神経や動体視力はまったく不要、極端のいえば目をつぶっていても打てる。基本的に必要なのは、毎回正しく回転する体幹とそれにシンクロする両腕、その回転運動をしっかり支える土台=下半身だけだ。つまりこの基本さえできてしまえばクラブヘッドとボールのミート率はぐんとアップし、ボールは狙ったところへちゃんと飛んでいく。いうなればハエタタキよりもずっとやさしい、運動神経などかえって邪魔なスポーツ――そんなゲームをスポーツといえるかどうかはさておき――なのだ。
したがって、私のゴルフへの取り組み方は実にシンプル。まず土台の下半身鍛錬のためによく歩くこと、その上に体の精確な回転運動をつくりあげてジャストミートを心掛けること、それだけだ。
私は普段練習場に行かないので、ラウンドの日はスタート1時間前にはコースへ行って練習する。ちゃんとした練習場がないハンパなコースを、私がアタマから毛嫌いするのもそのせいだ。
練習場へはドライバーとスプーン、5アイアンだけ持って行く。軽く体をほぐしたら「練習は短いクラブから始める」なんてクダラナイセオリーは無視して、まずドライバーを握る。ただし、グリップは右の中指から先がシャフトにかかるぐらい短い。そして最初はゆっくりしたハーフスイングでティアップしたボールを、ジャストミートだけ考えて打つ。そして、このグリップとスイングを少しずつフルショットのほうへもっていき、フルショットでジャストミートしたら十分。スプーンと5アイアンを2〜3球ずつ打ってできあがり、全部で30球もない。その後アプローチ(これも狙いはジャストミート)とパターをやってスタートというわけだ。なお、スタートホールでもドライバーは少し短く持ってジャストミートを狙う。
45年もやっていれば、自慢じゃないがスイングは一応完成している。これ以上いじるところはない。実際ビデオなどに撮られても85歳のスイングには見えない。練習場に行かないのもその自信があるからで、ただしスイングの基本は毎朝の筋トレと一緒に4キロのダンベルで左右85回ずつやって、精確な回転運動を体が忘れないようにしている。というわけで、これから日増しに暑くなりラウンド回数も増えてくれば飛距離も伸びるだろうし、アプローチやパターもキレがよくなって、長年の目標も達成できるだろうと前向きに思っているのである。
とはいえ、ゴルフは余計なことを考えるからミスにつながる。そういうことが私にもしょっちゅうある。この年になっても無心の境地には程遠いわけで、そのあたりはご覧のとおり謙虚さが欠けているのかもしれない。 |
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2017年06月09日(金曜日)更新
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第449号 〜環境劣悪 街路樹ヤマボウシ頑張れ〜
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私たちの住居は、4階建てが9棟集まったマンション団地の中でもっとも高い地盤に建っている棟の4階、つまり一番高い位置にある。だからベランダに出るとあたり一帯を見下ろす――大袈裟にいえば睥睨(へいげい)する感じになってなかなか気分がいい。なにしろこのあたりは"仙台市青葉区"といっても、29年前政令指定都市に合併された地域で、以前は“…郡…町”だった田舎だ。周辺には団地より大きな建物はなく、視界の4分の3以上は青葉若葉の新緑が占めている。「バカとケムリは高いところへ上りたがる」というが、こうしたいい気分はなにもバカ専有にさせることない。
晴れた朝など、その新緑の中に市道の街路樹ヤマボウシの大きな真っ白い塊が映える。そこに対面の青葉山からホトトギスの独特のさえずりが飛んできたりすると更にいい。ヤマボウシは樹冠全体をおおうように花が咲く。長さ2センチほどの白い花びらが4枚広がって枝先に密集するので、上から見ると白い塊になるのだ。ただしこの花びらは分類的には総苞(そうほう)という葉の変形で、ほんとうの花は中心の小さな目立たない部分だ。というわけで木を下から見上げても枝や葉にさえぎられて、ヤマボウシらしさはさっぱりわからない。山の斜面に咲いている群落をちょっと遠くから眺めたり、私みたいに見下ろしたりするのがいいのだ。
この木は元々山地に自生するので、東京あたりの都会人にはあまりなじみがないのではないか。『平家物語』“叡山の荒法師”からこの文学的(?)な名前ぐらいは知っているかもしれないが、実物をみることはほとんどないだろうと思う。実をいうと私も当地へ引っ越してきて初めて見た。同じ花木や街路樹でもサクラ(ソメイヨシノ)やハナミズキ、イチョウ、ケヤキなどと違ってそれほど一般的な木じゃない。
そう思いながらあらためて眼下のヤマボウシを見ると、あることに気付く。団地内に植えてあるいろんな木にくらべて、成長ぶりが格段に遅いのだ。
団地内は仙台市内にならってケヤキ(年末の定禅寺通“光のページェント”が有名)とサクラを主にエゴノキ、カツラ、カリン、コナラなどが植えてある。団地ができたときある住人に友人の植木業者が「おまえのところは安い木しか植わってないな」といったそうだが、なるほどそのとおり。手がかからず簡単に大きくなる木が多い。それら安いケヤキやサクラと並べてみると街路樹のヤマボウシは、樹高も幹周りもずいぶん劣っている。まるで大人と子どもである。
この団地が竣工したのと、傍を通る仙山線に新駅ができ道路が整備されて街路樹が植栽されたのはほぼ同じ頃だ。しかも一見して日当たり具合はまったく変わらない。この差は何によるのだろうと考えながらネット検索して、原因がわかった。
地面である。このあたりは地表のすぐ下が岩盤になっている。おかげで先の東日本大震災では揺れも少なくあまり被害もなかったのだが、ヤマボウシにとってはそれが成長を阻害する劣悪な環境なのだ。山地でも谷筋に自生するこの木には水はけのよさばかりでなく、常に水がある環境が必要なのだ。ちょっと掘っただけでスコップの先が岩盤にぶち当たるようなこの一帯には向かない木なのである。市の担当者は何を考えてこの木を選んだのか。周辺を見回してピッタリだと思い、ちょっと得意然としていたか。選ばれたヤマボウシこそいい迷惑だった。
それにしても、この過酷な環境に耐えて毎年ちゃんと花を咲かせ、秋になると見事な紅葉と赤い小粒な実――マンゴーのような甘さがある――をつけて楽しませてくれるのだからたいしたものだと思う。小さくても立派な一人前だ。
あらためて「頑張れよ!」とエールを送ろう。 |
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2017年06月02日(金曜日)更新
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第448号 〜ゴルフ スキー お葬式は壊滅する〜
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ネットの2chでときどき“これは!”とそそられるタイトル――“スレ”というのかな――があり、本稿のネタに拝借する。先日は「ゴルフ スキー お葬式はあと数十年で壊滅する」というスレが立ち、続いてなぜかわからんが“ゴルフのここがイヤ”という投稿(トビ?)がずらーっと並んでいた。トビはほとんど10数字と短く、長いものでも本項1行を越えるぐらい。内容もテンデンバラバラだが、そのいわんとするところは4つに大別できる。それらを整理しコメントを加えて並べてみよう。
もっとも多かったのが、「ゴルフは団塊バブルのお遊び」というトビだ。「金がかかりすぎる」「道具がやたら高い」「社用や接待でならともかく自前じゃできん」なんてのも同類だろう。
私が始めたのは40歳のとき、バブルがはじけオイルショック起きる寸前だった。だが日本中が経済成長はまだまだ続くと楽観しており、テニスのラケットでも空振りする運動オンチでさえクラブを握らされ、新設コースの会員権を投資目的で買いこんでいた。そんな接待手合いは大部分「時間や金をかけても100も切れずにやめた」はずだが、道具もプレー費用も依然として割高なのである。
これでは不人気なコースが相次いでメガソーラーに身売りするのも当然だし、ゴルフが廃れる一方という意見も納得できる。私としてはあと5年ぐらい楽しめれば……と思っているので、お気に入りのOコースにせいぜい肩入れしよう。
「デブがやってる」「やってる奴らがエラそう」という類も多い。腹が出て貫禄がついてくるとエラそうに見えるが、これをゴルファーに当てはめるのはマンガの読み過ぎ、ステレオタイプに戯画化した偏見だ。一例として私自身の体型の最新データをお見せしよう。身長165,6、体重58,4、体脂肪率18,2、BMI 21,3、先週なじみの診療所で計測した数値だ。そして“1ラウンド2万歩平均”歩いている。
エラそうなゴルファーは多い。「初心者や女性に教えたがるオヤジ」「メンバーのジジイがフロントで従業員に説教していた」「キャディバッグや手荷物の積み下ろしを部下にやらせている」ような連中だが、こうした手合いは接待ゴルフの遺物、早晩消えてなくなる。
「マナーがうるさすぎ」「ドレスコードって何だ? 短パンTシャツでやらせろ」なんてのは、いうなれば八つ当たりだ。人間社会にはどんなものにもマナーやルールがあり、それに従うことは自分と他者との違いを明らかにする根拠になる。
たとえば、われわれ日本人は行列にはきちんと並んで順番を待つが、中国人は隙あらば割り込んでくる。彼らの価値観では隙を見せる者はバカ、見つける者が利口なのである。民族性の違いであり、その底には文明の成熟度の差がある。一朝一夕で埋まるものではない。
イギリス発祥のゴルフにはアングロサクソンの民族性や文明が底にある。かのW・チャーチルの言葉「ライン川の向こうは野蛮人が住むところだ」に見られるような並外れた自尊心と頑固さ、皮肉っぽさだ。ゴルフを通してイギリス人が並大抵の相手じゃないことがわかるから面白いのだ。
「若い男性プロがおっさん臭いのが致命的」や「ゴルフやってるジジイやオヤジにラグビーやマラソンすすめても絶対やらないからな、要するにヘタレの遊び」というのには、私もまったく同意見だ。要するに、いまの新しいアメリカナイズされたスポーティなゴルフはサエナイ中高年には似合わないのである。
というわけで私の予想は、数十年後どころか10数年後にはゴルフとスキーは半減、お葬式は5分の1程度に縮小して細々と残っていく……だが、どうだろうか。 |
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2017年05月26日(金曜日)更新
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第447号 〜本物のシジミの味噌汁が消えていく〜
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晩春から初夏にかけてのこの時期、シジミの味噌汁をよく食べる。昨今は冷凍や温室栽培の技術が発達して、魚でも野菜でも“旬の食味”から縁遠くなっているが、それでもやっぱり春はフキノトウ秋はサンマだ。サンマなど“秋刀魚”と書いてもたいていの人は読めるし、秋になると気仙沼漁港から水揚げしたてを東京は目黒まで持ち込んで、焼きたてをふるまっている。
よってこの季節はシジミの味噌汁なのである。
ところが先日、異様に“でかい”シジミに出くわした。調理前の砂抜き時点で、家内が「今日のシジミは大きいわよ」といってはいたのだが、出てきた味噌汁の中身を見て唖然とした。殻の色合いはまさしくシジミだがサイズはアサリだ。念のため一番でかそうなのを選んで身を食べ、殻を開いて物差しを当ててみると6,5センチを越えた。いやぁビックリした。こうなると、二枚貝の仲間では小ぶりなところから“縮み”がなまったという名前の由来も疑わしくなる。
家内に産地はどこだったか訊くと「千葉県産と書いてあった」という。千葉県なら利根川だが、いま利根川や相模川など関東のかつての主な産地は全滅、東北では青森県の十三湖と小川原湖が辛うじて残っているぐらいだ。日本のヤマトシジミは近縁種が朝鮮半島やシベリアに生息しており、現在われわれが食べているシジミの半分以上はそれら輸入物だという。当地のスーパーでも青森産が品切れになるとそれを並べるわけで、この千葉県産もおそらくそれだろう。解氷したアムール河産あたりを千葉県の業者が仕入れ、利根川の水に2〜3日漬けて出荷したものじゃないかという気がしてくる。そういえばあのシジミ独特の風味も薄かったし、なんたってあの“でかさ”は“ニッポンのシジミ”じゃない。
「メイド イン ジャパン」について、こんな話を聞いたことがある。
ミシンなど外地で99%まで組み立てた製品でも、日本国内の工場に持ってきて仕上げのネジを1本締めるだけで「メイド イン ジャパン」の刻印が打てるというのだ。これを聞いたのは私たちが当地に引っ越して間もない頃なので、それほど古い話じゃない。また話してくれたのがミシンのトップメーカーの技術屋さんだったから、満更デタラメでもないだろう。千葉県産のシジミと似てはいないか。
「シジミの味噌汁は二日酔いに効く」というのは酒飲みの常識だ。東京の下町では昭和30年代まで、知り合いが黄疸になるとシジミ持参で見舞いに行ったそうだ。二日酔いも黄疸も肝臓がやられたときの症状だ。シジミが肝細胞修復に効果があることを古人は経験的に知っていたのだ。シジミを煮詰めた“エキス”もあった。宴会の前に小匙1杯なめておくと悪酔いしなかったという。木曽川産のシジミだけを素材にした製品が評判だったがいま残っているかどうか……。
近年、世界各地で“タイワンシジミ”なる代物がはびこって問題視されている。中国人移民が持ち込んだ食材が繁殖帰化したのだ。移住先はアメリカ(USA)やヨーロッパなど先進文明圏が主、もちろん日本も例外ではない。どれほど生活環境が変わっても人間同様コロニー(中華街だ!)をつくって定着してしまうしたたかさは、シジミにも民族性があるのかといいたくなる。
私は戦前の台湾で生まれ、戦後13歳のときに引揚げて来たのだが、この代物にはまったく記憶がない。シジミの味噌汁も口にしたし、台北市郊外を流れる淡水河にシジミ獲りにも行っていた。あらためて調べると、タイワンシジミは殻が淡黄色だから黒いヤマトシジミとすぐ見分けがつく。それがまるで覚えていないのは、あの時代の子どもはだれでも食べることに精一杯で食材の吟味など頭になかったからだと思う。
いずれにしろ、われわれは贅沢になったのである。 |
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2017年05月19日(金曜日)更新
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第446号 〜世界で優勝した女性高齢者アスリート
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この団地の管理センターにNさんという女性の嘱託職員がいる。もう10年以上勤めており、私たちともすっかり顔なじみだ。数年前までは正規の職員だったが、65歳になって規定により嘱託に……。これは年齢をバラすので女性に対するエチケット違反ですが、世界一になった“スーパーレディ”の話ですのでご寛恕願います。
Nさんは週に3〜4日、赤いマイカーで出勤してくる。職員用の駐車場が私たちの4階の住居から約130ヤード打ち下ろしといった感じで一望できるので、「あ,今日は来ているな」とわかる。
その赤いクルマが先月下旬からGWにかかて10日間ほど見えなかった。それで家内と「きっと旅行にでも行ってるんだ」「海外かな」などと話し合っていたのだが……それがまさかオークランド(ニュージーランド)で開催されていた『ワールドマスターズ』に出場して、金(女子ダブルス)銀(混合ダブルス)二つものメダルを獲得していた
とは思いもよらなかった。
ワールドマスターズは“生涯スポーツを目指す高齢者のためのスポーツの祭典”だ。オリンピック同様4年に1度、世界中から高齢者アスリートが集まって開かれ、種目もオリンピックほどではないがなかなか多彩だ。オークランドでは次回・日本関西大会の準備視察がてら訪れた、鈴木大地スポーツ庁長官が10kmマラソンに出場し「ニュージーだからキウイ(9位)が目標」と走ったそうだ。
Nさんがエントリーしたのはバドミントン。ダブルスの65歳以上クラスだ。予選から決勝まで勝ち上がると全部で10ゲーム。1ゲーム30分ほどだが、朝8時開始もあれば勝ち進んで夜9時過ぎから始まったこともあり「きつかった……」という。
それにしてもスゴイ! 世界の頂点に立った運動能力もさることながら、この年になって――しかも女性ならではのハンデもあれこれあっただろうに、その頂点を目指した意欲と努力がスゴイと思う。
Nさんの競技歴は高校時代インターハイに出場したぐらいで、いっちゃぁナンだが世間にはその程度のキャリアはザラにいる。だが、たいていの女子プレーヤーは高卒とともにプレーから離れ、もっと人気のあるカッコいい、早く言えば男の子と楽しく遊べるスポーツに移っていく。「ソフトボールなんて卒業したら誰がやるか、たいていやめちゃうよ」である。
事実このNさんにしても「30代である先輩に出会わなかったら、ここまで続けてこなかったでしょうね」という。郡山にいた頃、市内でバッタリ出会った先輩から、近く市の大会があるので「ペアを組んで出てみない?」と誘われ、優勝してしまったのだ。それをきっかけにプレーを再開し現在に至るのだから、ホント人生何が起こるかわからない。
Nさんはこの年代の女性にしては上背があり、各関節もまっすぐなスリム体型、姿勢がよく動作もなめらかなので遠目には40代、ファッション次第では30代といっても通る。家内など多少O湾曲気味のひざを気にして羨ましがるが、その家内でさえふた回り以上若い知り合いから「○子さんは年よりぜったい若く見られるんだから自分の本当の年ぜったい言っちゃだめよ」としょっちゅういわれているほどだ。Nさんも家内もいつも運動を欠かさないせいである。
考えてみるとゴルフやテニス、スキーといった年老いても楽しめる一見カッコいいスポーツは、それだけで若さや活力あふれるスリムな体型を維持するのは容易ではない。コースやコートやゲレンデでいくら汗をかいても、その後ビールなど飲みながら褒め合うだけでは内臓脂肪は減るわけないし筋力も衰える。週イチどころか月イチ、それもほとんどカートで18ホールをやっと回っている年寄りが「この頃めっきり飛ばなくなってよ〜」とグチっても、聞くほうは甘えるなと顔をしかめるだけだ。
実際Nさんに普段のトレーニングぶりを聞くと、その半端じゃなさに目を見張る。週2〜3回2時間ほどだが、シロウト目にも内容の密度は濃い。それでも年来のパートナーなど他のプレーヤーにくらべるとずっと少ないという。「だからわたしは体力がなくてシングルスはきついんですよ」と残念そうだ。シングルスでも金メダル、と思っているのかも……。
まだまだ前向きなのだ。
Nさんは20数年前ご主人を亡くし娘さんもすでに嫁がせて、自分の時間には不自由のない身だ。とはいえ「だからできるのよ。アタシみたいに口うるさい姑やヤキモチ焼きの亭主持ちじゃぜったい無理よ」などというのは逃げ口上、後ろ向きの言い訳でしかない。
朝出勤してきたNさんは駐車場から“コの字形”に、右折右折と約200メートル歩いて管理センターにやって来る。そのタイミングが私のベランダ体操と一緒なので4階と下で手を振って「お早う、今日も元気だね」と無言の挨拶を交わす。
年下でも女性でも、私には励みになる人だ。 |
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