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2016年04月01日（金曜日）更新
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第５０号 今こそ！映画『二十四の瞳』を！
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春です。桜の季節です。
桜といえば、思い出されるのは、日本映画の名作、木下恵介監督の『二十四の瞳』。この映画で深く心に残るシーン、それは主役の大石先生（高峰秀子主演）が丘の上の満開の桜の花の下を１２人の子供たちと楽しく走る汽車ごっこの場面・・実に美しく、思わず頬が緩みます。
おだやかな小豆島と瀬戸内の海。
背後に流れるのは、あの懐かしい数々の唱歌、��� からすなぜ鳴くの・・の『七つの子』『ふるさと』『仰げば尊し』などなど。観ているうちに心が和（なご）んできます。
ところが！です。この美しい映画を楽しんでいるうちに、
（あれれ？ おや？ これは？）（黙ってはいられないぞ）そんな気持ちが湧いてきたのです。
この映画『二十四の瞳』が封切られたのは昭和２９（１９５４）年、今から６０年も前ですが、（近ごろの世の中、なんだか、その６０年前の頃に似てきたのではないか？）そんな不安が浮かんできたのです。
この映画、後半になるにつれて、あの美しい小豆島に暗い影を落とし始めます。こんなシーンがあります。自分の思ったことを自由に話す大石先生にある日、校長が声をひそめていいます。「この時世では、あんた余計なことは言わんほうがいい」
DVDを観ているうちに、ふと思い出してしまったのです。 「気にいらないテレビの電波は停止する」などと、ぬけぬけと宣（のたま）ったあの“危いオバさん”のことを。
６０年前の小豆島に覆いかぶさってきた黒い雲が平成の今、（再びやって来るのではないか？）そんな気配が。 その“危険なオバさん”の親分サンも“三本の矢”から、次は恐ろし〜い“４本目の矢”を、振り回し始めているようで、「よお、“４本目の親分”サンよ、『二十四の瞳』の中にこんなシーンがあるのを、お前さん知っているかい？」な〜んていいたくもなります。
そのシーンです。
瞳がキラキラ輝いていた小豆島のあのあどけない男の子が、数年後には小さな白木の箱に入って島へ帰ってくるのです。
思わず涙、涙です。
この映画と同じ暗〜い流れを、私たちが気がつかないうちに、今、辿（たど）らされつつあるのではないか、そんな不安を感じます。
× × ×
どうか“４本目の親分サン”よ、危い“４本目の矢”なんか番（つが）える前に、ぜひ『二十四の瞳』を観ておくんなせぇ。もちろん「テレビ電波を停止する」などと口走ったあんたの子分の“危いオバさん”にも、この映画を薦めてやっておくんなさいまし。
ついでにテレビ局にもお願いしておきます。今こそ映画『二十四の瞳』のリバイバル・放映を ――― と。
（まさか、あの“危いオバさん”がこわくて放映できない）なんてことはないと思いますけどね。
今、日本列島は春。まさに桜の季節。
満開の桜の花の下を、今もあの『二十四の瞳』の子供たちのように、幼い子供たちがなんの不安もなく元気で走り回れる・・そんな日本でありたいものです。木下恵介監督が６０年前に暗示してくれたあの暗〜い影はもうご免です。
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2015年09月07日（月曜日）更新
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第４９号 「ぴんぴんころり」考
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最近よく耳にします。「ぴんぴんころり」という言葉。あなたも聞いているはずです。
「ぴんぴんころり」 ――― これ、理想的な死に方なのだといわれています。
元気に「ぴんぴん」と生きて、死ぬときは病気もせずにあっさり「ころり」とあの世へ行きたい、それが「ぴんぴんころり」だというわけですが・・・。
（はたして、これでいいのかなァ）
と、私は思うのです。
「ぴんぴん」 ――― 広辞苑によれば、「元気いっぱいの様子」だといいますが、ま、これはこれでいいでしょう。しかしです。気になるのは「ころり」です。
広辞苑では「ころり」は、1.ものが落ちてころがったり突然倒れたりするさま。2.急にものが成立したり変化したりするさま。 ――― と、あります。その引用例として、「 ――― と死ぬ」「 ――― とだまされる」などがあげられています。
世間一般では、何の疑惑もなく「できれば、ぴんぴんころりと逝きたいね」でいいのでしょうか？
もう一度辞書のお世話になります。
『暮らしのことば 擬音・擬態語辞典』（山口仲美・編 講談社）によれば、「ころり」は、
1.小さい物が軽やかに転がる様子
2.3は略
4.あっけなく死ぬ様子
「ぴんぴんころり」の「ころり」は、この4.に該当しますが、人生の終わりをいくらなんでも「ころり」と「あっけなく死ぬ」というのはいかがものでしょうか。
最近、高齢者が一人で亡くなる「孤独死」が大きな話題になってますが、「ころり」には、だれにも看取られることもなくあの世へ逝ってしまう・・・、そんな寂しい“孤独死”を思わせると、感じるのは私の思い過ごしでしょうか。
ここで、私ごとで恐縮ですが、私の兄の他界の様子をご参考までに紹介してみます。
私の兄（大正生まれ、私よりX歳年上）は１５年前に他界しておりますが、いささか変わった「ぴんぴんころり」（？）でした。
兄は実に几帳面な性格で、自分の死期を悟っていたのです。そして「ころり」の前に、私たち兄弟５人を枕元において、われわれ兄弟に「いろいろお世話になったなあ、有難う」と、言って間もなくあの世へ旅立ったのです。
「さすが私の兄弟！」です。
単なる「ころり」ではなかったのです。枕元の全員ひとりひとりに「さようなら」を言ってくれたのです。
そして「ころり」、いや、「ころり」というよりは、もっと大らかな雰囲気、「ろ」と「り」の間に「−」（音引き）を入れて、安らかに「ころーり」。そんな感じのおだやかな別れだったのです。
「ぴんぴんころり」。これでは寂し過ぎます。
「ぴんぴん」の間に、せめてお世話になった方々への「さよなら」とお別れの気持ちを・・・。そしてその後で安らかに「ころーり」。
「ぴんぴん・さよなら・ころーり」。
素っ気ない寂しい「ころり」より、「ころーり」、この方が温もりがあっていいと私は思うのですがいかがでしょうか。
× × ×
余計なことですが、私などはどうも軽薄でおチャラケ人間ですから、
「おれは、ぴんぴんころりんがいいかな？」
と、勝手に「ん」をついてみたり、「ころり〜ん」とのばして、
「ぴんぴん・バイバイ・ころり〜ん」
はどうかナ？ などといってしまったり・・・。
（これじゃ、「まじめにやれよ」と、ヒンシュクを買いそうですが）
いずれにしろ、高齢化社会が進む昨今、“孤独死”の「ころり」だけは避けたいものです。
そのためには、周りの人たちのそれとない、“さらり”とした温かい気遣いが必要なのではないでしょうか。
ま、とりあえずは、皆さん、お互いに「ぴんぴん」してましょうよ。
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2015年06月29日（月曜日）更新
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第４８号 ネーミング考
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前回４７号の予告で、「世界的な話題になる！であろう記事」を発信・・などと、大口をたたきましたが、実を申しますと、それほどでもないんです。ただし今回のお話のターゲットが「世界のトヨタ」さん相手であるところから、「世界的」と申しただけであります。
今、「世界のトヨタ」が力を入れているのは、ご存知の通り、「燃料電池車」です。でも、このネーミング、なんだか古めかしいと思いません？ 「ネンリョウデンチシャ」。カタカナにして１０文字、実に散文的です。未来のカーとしてはどうかなァーと思われるネーミングです。ガソリン不足の戦時中、木炭を燃料にして走る「木炭自動車」なるものがありましたが、あれと同じ発想ですよね。
いくら空気中の酸素と、燃料としての水素を燃やして走る“究極のエコカー”だからといって、「ネンリョウデンチシャ」（燃料電池車）じゃ、カッコ悪過ぎるんじゃありませんかねェ、「世界のトヨタ」さん。
あの「ハイブリット」がスマートに定着したように、早いとこ、「ネンリョウデンチシャ」に代わる素的なネーミングを！ と思うのは私だけでしょうか。
ネーミングといえばもう一つ。
「ミドリムシ」です。
ミドリムシ、と聞けば「虫」の仲間のように思われますが、本当は虫ではなく「藻の一種」で、今や注目の物質。ビタミンやミネラルを含み、健康補助食品として話題になっていますが、軽油質を含んでいるところから、次世代のバイオ燃料として、このミドリムシでジェット機を飛ばすことができるといわれてます。
そんなところから、最近はミドリムシの学術名の「ユーグレナ」という名前に変身。健康食品として登場してきています。これ、「ムシ」よりもずっとスマートですよね。
ネーミングがいかに大切か――というお話でした。
あ、そうそう、
ネーミングについて、もう一つ、これは注告。いくら素的なネーミングといっても、最近話題のあのアホらしい「キラキラ・ネーム」ってやつ。将来、子供がどれだけ迷惑するか――それを考えたら、ルビつけなきゃ読めないような名前はつけないほうがいいと思うんですけどねエ・・。
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2015年01月14日（水曜日）更新
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第４７号 ☆コーナー再開の弁
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「物言わぬは腹膨（ふくる）る・・・」
と、これ、古人のお言葉。
私め、長いこと当コーナーを休ませていただいて参りましたが、再び書かせていただくことにいたしました。
世の中どうもかまびすしきこと多くなり。あの「あべのナントカ」などを声高に唱え、なにやら鎧（よろい）を着たがりそうだという噂のお方をはじめ、理不尽なことがらがいろいろ目につく昨今、（メタボではないけれど）黙っていればますます“腹膨るる”こと多くなりそうな気配。したがって、今こそ「物言おう！」と、このコーナー再開を決意した次第であります。
まず、手はじめは、「不思議な電車」なるこんな詩（？）からスタートです。
× × ×
「不思議な電車」
△月△日、不思議な電車に乗りました。車内の座席は乗客で埋まっていました。でも、だれもケータイやスマホなんかをやっていませんでした。み〜んな音無しく、本を読んでいました。ケータイやスマホなんかをやっている人は一人もいません。
不思議な電車でした。
走り去ったあの電車
もう二度と乗ることはないのでしょうね
あの不思議な電車
× × ×
「黒い吊り皮」
電車といえば、あなた吊り皮まっ黒い電車に乗ったことありませんか？
乗客が少ない時刻、あのズラリと並んでぶら下がっている黒い吊り皮。車体が揺れるたびに黒い三角の握りの部分がいっせいにぶらんぶらん揺れます。実に不気味です。不愉快です。（こんな電車、走っているのは東京の中央線だけなのでしょうか？）
色彩感覚ゼロ！ 乗客の気分を暗〜くするような吊り皮を考えたやつはだれなんだ！ これってまるで“葬式電車”（？）だよ。
こんな気持ちの悪い電車、今日も東京を走ってるんです。
ナンマンダブ、ナンマンダブ・・・・。
× × ×
あ、電車の吊り皮といえばもうひとこと。今、インフルエンザ、風邪流行の季節。
「外から帰ったら、うがい・手洗いを―」と、呼びかけています。ご丁寧に“手の洗い方”を図入りで紹介している記事まで。
だがですよ。外出のとき、手袋をしている人が多いのです。
そういう場合でも、バイ菌は手袋を通して入ってくるんですか？ 手袋も汚れていると思うんですが、その手袋をどう扱ったらよいのか？ そんな注意をしている医師にお目にかかったことはありません。新聞記事でも見かけません。名医の先生、手袋をした手と手袋の扱い方、教えてくださいませ。
〔次回予告〕
このコーナー、次回は、「世界的な話題になる！であろう記事」を、私から発信させていただきます。
乞うご期待！！
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2012年06月29日（金曜日）更新
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第４６号 言葉新軽吐（アラカルト）
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まず「三段なぞ」から。
近ごろの「若者ことば」と掛けて、「ＡＫＢ４８」と解く。
その心は、「おじさんには、さっぱりわからん」なのである。
たとえば「やばい」（時に「やべー」） これなど、以前は「危ない！」「最悪！」など、「広辞苑」でもいうように「不都合である」という意味として使われてきたが、近ごろでは「すっごくいい！」ときも「やばい」というようで、テレビのおバカ・タレントなどがときどき使っているので、思わず「ん？」となってしまうことがある。
言葉は生きている――というが、「これってなんだかなぁ」という言葉を大人も使っている。
[ジューシー]
「わあ、このお肉ジューシーでおいしい」
「この肉マンのおいしいこと、すっごくじゅーしーね」
というように、今や「ジューシー」がほめ言葉の代名詞になっている。先日もラジオ番組で評論家の大宅映子さんが、「やたらとジューシーというな」と苦言を呈していたが、「ジューシー」とは、もともとは「水分が多いさま。汁が豊かなさま」（広辞苑）なのだ。先日はＮＨＫテレビの函館ルポ番組で、レポーターが函館の朝市で出来たての裂きイカをつまんで口に入れ「ジューシーですね」といっていた。いったい裂きイカのどこが「ジューシー」なんだ！
そのうち、
「わァ、富士山の御来迎ジューシーですてき！」
「お、今夜の満月はジューシーだ」
なんていい出しかねないナ。
おい、それをいうなら十四（ジューシー）じゃなくて満月は「十五」だろ。
[スカイツリー]
「鐘ひとう 売れぬ日はなし 江戸の春」
威勢のいい江戸の春を詠んだ句だが、近ごろの江戸・東京といえば、
「スカイツリー 話題にならぬ日はなし 江戸の春（字あまり）
というところか。
やれ、粋なライトアップが始まったとか、やれ、隅田川の屋形船から見るツリーは風流だとか、やれ、写真撮影のベスト・スポットはどのあたりだとか・・・このところ、東京スカイツリーがマスコミの話題にならぬ日はなし、といった状況。このスカイツリー・ブームは当分続きそうだが、さて、５年後、１０年後、さらにン１０数年後になったとき、
「えーと、スカイツリーが完成したのは、あれ、いつだっけ？」
ということになりはしないか・・・と思うのです。そこで、スカイツリー完成の年、思い出しの句を１句。（これ覚えておくと便利かも） ツリーの高さは６３４メートル、完成したのは２０１２年、施工の親会社は東武、というわけで、
武蔵（６３４）野のツリーの 匂いに（２０１２） 蝶も飛ぶ（東武）
というのはいかが。
あ、そうそう。もう一つの東京のシンボルタワー、「東京タワー」。あれが出来たのはいつだったか覚えていますか？ 覚えていないでしょ？
東京タワー完成の年を思い出すための、これも１句。
タワー見に 行く子は（１９５８） パパと肩ぐるま（高い高ァい）
１９５８年完成の東京タワーも忘れないでネ。
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