ユーモアクラブの
ためになるユーモア講座

古今東西あまたの名言、格言、人生訓など「ユーモアの宝典」を連続紹介

 
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ダーク・ヒグマーノ
 (翻訳者 中山 善之)
1935年、北海道生まれ。

慶應義塾大学卒業。外資系メデァ日本支社勤務後、翻訳家に。乱読家で東西の本は勿論中国古典なども好む。
訳書としては世界中でベストセラーになっているクライブ・カッスラー著「ダーク・ピット」シリーズ全20巻(日本語版計32冊、新潮社文庫)。
ヤノフ著「原初からの叫び」(講談社)。ムーディ・jr著「かいまみた死後の世界」(評論社)など多数。
近頃は山奥での魚釣り、たまにはゴルフもするが一番は大酒のみ。

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2009年11月13日(金曜日)更新

ユーモアクラブのためになるユーモア講座 150

 日米両国での野球の決戦も終わり、いよいよ夜長の季節。本でも読んで過ごそうかと思っていると、おあつらえ向きに北の国では里にも雪が降り積み、いよいよ冬篭りの季節到来。そこでと言うわけではないが、遅ればせながら手始めに「プリズン・ストーリーズ」(ジェフリー・アーチャー、永井 淳訳、新潮文庫)を読んだ。ご承知の通り、著者が偽証容疑で四年の実刑判決を受け、服役中の犯罪者から聞いた実話を脚色した短編集でこれがなかなか面白かった。その中の一編、“もう十月?”(It Can’t Be October Already)は秀逸だ。娑婆の風が冷たくなる十月には春が来るまで刑務所むしょでぬくぬくと暮らすために、春には釈放されるよう刑期六ヶ月の軽犯罪を繰り返す男の話で、所員や長期の服役者たちは彼が入所してくると異口同音に、“まさか、もう十月なのか”と口走るのがこの話の落ち。

 実は以前にも書いたが、今年の夏に網走に行った際に、新装白亜の冷暖房完備の刑務所を望見して、いよいよとなったらここにお世話になれば万事この世の悩みからは開放だと旅仲間と冗談を言った覚えがあってこの本を読みたいと思っていたのだ。世の中にはつねに上手がいるもので、毎年、同じ所業を繰り返しながら,なおかつ所員から愛されている男に感心していると、作家のアーチャーは元手なしで聞かされた話をまとめて大儲けしたわけで、さらに上手を行っている。なんとかと挟みは使いよう。当然、頭も。脳味噌は使い減りしないそうだ。駕籠に乗る人担ぐ人、そのまた草鞋を作る人。まさに人さまざま。 Some are born with a silver spoon in the mouth, and some without. 所詮、人の幸不幸は、その人の考えかたしだいか。
 

2009年11月06日(金曜日)更新

ユーモアクラブのためになるユーモア講座 149

 このところ、午前中はワールドシリーズ、夜は日本シリーズのTV観戦で多忙な方が多いのではないだろうか。昨日、久しぶりで行きつけの飲み屋へいったら、客が一人もいなく、野球が終わらないと商売にならないと言うなかなか美形(?)のママのボヤキを聞きながら野球を肴に酒を飲んだ。それにしても、野球場の応援の騒々しさにはTV越しでも辟易とした。あの騒音の中には、とても居られそうにない。考えてみたら、私が野球を見に行かなくなったのは、何しろこの世に長く生きてきたので、金田と長島の初対決はじめ名勝負を見飽きるほど球場で見たせいもあるが、ダメ押しをしたのは応援団の傍迷惑な騒音だった。あの音の暴力の中に居るのは拷問に等しい。日本人は耳が悪いのではないかと、訝る外国人が往往にしていると聞くが一概に無視できないものがあるような気がする。その点に関しては、アメリカの大リーグのほうがまだ静かで、ボールを打った瞬間の胸躍る球音が聞き取れて興奮を誘う。

 ところで、多きにお世話だといわれるだろうがアメリカの野球の放映を見ていて、最近たいそう肥大なさった老若男女がひどく目立つので気になっている。野球好きは太る心理的あるいは社会学的要素があるのだろうかなどと、愚にもつかないことをかんがえて自分自身メタボで、あの悪名高き後期高齢者に近かじか組み入れられる――廃止になることを切に望むが――小父さんが頭を悩ましている。そういえば日本シリーズの観客にも、従来あまりお目にかかれなかったタイプのすこぶる肉づきよい男女を多く見かける。どういう訳だろう。ボケ防止に、ひとつ研究してみるとしようか。
 

2009年10月30日(金曜日)更新

ユーモアクラブのためになるユーモア講座 148

 特急で片道二時間あまりの晩秋の旅をしてきた。車窓から眺めるかぎりでは、山々の木々は依然として紅葉中の感じでまだ冬枯れの感じにはほど遠く、いったん冠雪した山並も雪が消え青く澄んでいた。いかにも暖冬の感じで、札幌の町を少し歩くだけで汗ばんだ。
 
地球の温暖化の克服が世界共通のテーマとなって久しいが、最近アメリカの科学雑誌「サイエンス」の報じるところでは、北極圏には地球上でまだ開発されていない天然ガスの30パーセント、原油の13パーセントが埋蔵されている。それらにオイルサンド(oil sand, 油砂)を加えた上記の埋蔵資源の保有国となると、主にロシア、アメリカ、カナダ、ノルウエーで、それらの国の間で新たなエネルギー戦略と奪い合いが展開されるのはいまや必至の様相だ。

 しかも皮肉なことに、地球の温暖化によって北極の人類を拒み続けてきた氷床ひょうしょうは急激に縮小し続けているので、上記の天然資源への接近開発がにわかに現実味を帯びてきたが、オイルサンドや天然ガスなど資源化の副産物として地球温暖化の元凶とみなされている二酸化炭素(CO2)が大量に発生する。その矛盾をどう解決するかが、他人事ひとごとではなく焦眉の急を要する課題のようだ。

 ここからはフイクションの世界の話だが、その問題を一挙に解決する素晴らしい名案がある。自然界の偉大な摂理(二酸化炭素を酸素に変換する) 光合成を、人工的に行なう施設を世界中に配置すれば万事解決。瓢箪から駒で、この名案が実現される望みは無いものか。
 

2009年10月23日(金曜日)更新

ユーモアクラブのためになるユーモア講座 147

 晩秋。錦繍の秋。旅心を誘う秋。北帰行の季節とき。山の頂はすでに冠雪。
霜葉そうようは二月の花よりもくれないなり” “秋風起こりて白雲飛ぶ。草木黄落してかりがね南へ帰る” “秋風落葉正に悲しむに堪えたり。黄菊残花たれをか待たんと欲する”

 北の国では風が冷たく、雪が里まで下りてくる日の近いことを暗に知らせている。やがて吹き越しの雪が、風に乗って山並から舞い下りてくる。なにやら、以前に登場してもらったキリギリスにも似た心境になって、来し方を省みて残りわずかな歳月を悔い無きように過ごそうと考えてみるが、いまさら遅すぎるようにも思えて気の迷いが生じる。かくして、また一年が経つのか。

 “世にるは大夢のごとし、胡為なんすれぞ其のせいを労する”この世に生きているということは、大きな夢を見ているようなものだから、なにゆえに四苦八苦するのだ。そんなことは無駄だ。日夜痛飲、施しに財を散じ、杜甫とほに比肩される李白りはく先生のご高説なれば、素直に倣いたいところだが、そうも行かぬのが世の習い。いや、こちらが小人ゆえか。

 ところで杜甫先生は、大酒飲みの李白の友だけあって、“此の身醒めた酔う。興に乗じてはすなわち家とさん”と詠っている。興が乗ったら、どこであろうとその場所をわが家とする。こちらのほうなら、杜甫の教えに従えそうだ。またまた酒の話になって申し訳なし。
 

2009年10月16日(金曜日)更新

ユーモアクラブのためになるユーモア講座 146

 前回のモーム作の「アリとキリギリス」の落ちは、勤勉家の兄は五十歳で引退し悠々自適の余生を送るだけの金を蓄えるが、弟のほうは母親にも等しい年齢の女性と結婚をするが彼女が急死し、兄が営々辛苦の末に貯めた金の十倍以上もの遺産にありつき、なに不自由なく暮らしたが、人を見ると小銭を借りる昔の癖はなくならなかった、という皮肉なもの。
 
 作家の感性か、生誕百年で何かと取り上げられている作家太宰治の「お伽草紙」の中の一編“かちかち山”にも同様の翻案がある。「かちかち山」は皆さんご存知の悪さばかりするタヌキを正義のウサギが懲らしめる話しだが、太宰はタヌキを懲らしめるにしても、マキを背負わせて火をつけて火傷をさせ、手当てをすると見せかけて唐辛子入り油を塗り、騙して泥舟に乗せて沈めたりするウサギのやり口は陰険過ぎると憤慨、タヌキを無芸大食の中年男に置き換えて、清純にして冷酷な美少女ウサギに愚かにも恋をしたタヌキに肩入れをして、泥舟で沈むタヌキに“惚れたが悪いか”という太宰一流のセリフを吐かせて、読者を喜ばせている。

 寓話といえば、「カフカの寓話集」(池内 紀遍訳、岩波文庫)のなかに、彼にしては分かりやすい一編があった。題して、“ロビンソン・クルーソー”「彼が島の中のもっとも高い一点、より正確には(通り掛かる船がよく見える)もっとも見晴らしのきく一点に留まり続けていたとしたら――そのとき彼はいち早く、くたばっていたろう・・・」彼は島の調査に取りかかり、それを楽しんだ故に命ながらえ、かつ彼自身発見もされた、というのがカフカ先生のご高説。
 
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